ブライダル法務Q&Aキャンセル料

担当/BRIGHT代表夏目 哲宏

ブライダルを巡る消費者トラブルの約7割を占めるというデータもある「キャンセル料」の問題。
昨今非常に大きな動きがありますので、それに関する情報をここに集約していきます。

消費者団体からドレス事業者が「キャンセル料」規定について提訴されたそうですが?

日本国内に12団体存在する適格消費者団体の1つである「消費者支援機構関西」が、大阪に本社を置く婚礼貸衣装業2社に対し、キャンセル料規定水準の一部が消費者契約法第9条第1号の「平均的な損害」を超えるものだとして、当該キャンセル料を規定した規約の使用差し止め等を求めて、平成27年9月2日に、大阪地裁に提訴しました。

ブライダルに関する「キャンセル料」水準の問題については、別の適格消費者団体である「NPO法人京都消費者契約ネットワーク」が、大手式場運営会社2社に対して、『式場』の規定について同様の訴えを起こし、同月最高裁で退けられたばかりでした。

『式場』契約については事業者の主張が認められた格好でしたが、今回は『ウェディングドレス』に対象が拡大したともいえる今回の提訴。追加情報が入り次第、配信してまいります。

↓↓消費者支援機構関西のWEBサイト
http://www.kc-s.or.jp/detail.php?n_id=10000544

式場の「キャンセル料」を巡る最高裁の判断が示されたそうですが?

平成27年9月7日付日本経済新聞の報道によると、「キャンセル料水準が高すぎる」などとして消費者団体が大手ブライダル企業を相手に該当規定の使用差し止めを求めていた訴訟で、最高裁が上告を受理しない決定をくだし、消費者団体の請求を退けた第2審判決が確定しました。

この消費者団体は過去に別のブライダル企業を相手に同様の訴訟を提起していましたが、その請求も最高裁で退けられ、ブライダル企業側が勝利しています。

ブライダル業界においては、かねてから一部の消費者団体等から約款・規約上の「キャンセル料」の水準が消費者契約法第9条第1号の「平均的な損害」を超える無効なものではないかとの指摘があり、長年その水準の妥当性が論争となっていましたが、今般このように最高裁の判断が重ねて示されたことで、この問題は完全に司法上の決着がついたといえそうです。

BRIGHTとしては、訴訟関係者の皆様のご努力に敬意を表するとともに、今般の最高裁の判断からブライダル事業者が何を教訓とすべきか、また「キャンセル料」の水準をどう設定すべきかを精査し、セミナー等の機会や「電脳となりの法務君」を通じて情報発信してまいります。

消費者団体からドレス事業者が「キャンセル料」規定について提訴されたそうですが?②

2015年10月30日付産経新聞等の報道によると、大阪の婚礼衣裳事業者が適格消費者団体「消費者支援機構関西」より、ドレスのキャンセル料規定が「不当に高額である」として、その規定の使用差し止めを求められていた訴訟において、同日に大阪地裁で開かれた第1回口頭弁論期日にて、事業者側が請求を全面的に認める「認諾」を表明し、終結しました。

要するに、消費者団体側の「キャンセル料規定が不当に高額」という主張を、事業者自身が受け入れ、裁判を終了させた、ということです。

問題となっていたのは「契約時から使用日30日前までのキャンセル料が、一律契約金の30%となっている」点。この点について消費者団体側は「1年前だろうと2年前だろうと、契約をし た瞬間から一律30%とは高額すぎる」という趣旨の主張をしていました。

結婚式を巡るキャンセル料については、本年9月に最高裁がある大手企業の「結婚式場」のキャンセル料水準の妥当性を容認した判断をくだしたばかりですが、火種が「ドレス」のほうに拡大しつつあると言えそうです。
(2015.10.31)

ドレスのキャンセル料に関する問題点を教えてください。

ドレスのキャンセル料を巡って消費者団体が大阪の婚礼衣裳事業者2社に対して訴えを起こしていた件で、2015年10月30日に「まさか」の形で決着したというニュースが飛び込んできました。

大阪地裁で行われた第1回期日で、事業者側が消費者団体の「言い分」を「認諾」、つまり「あなたの言い分はおっしゃる通りと認めるので争いません」という意思表示をし、裁判自体が終結したのです。いわば、事業者側の 全面降伏 です。

30日付産経新聞等の報道によると、訴えていたのは適格消費者団体「消費者支援機構関西」で、事業者の設定するドレスのキャンセル料規定が「不当に高額である」として、その規定の使用差し止めを求めていました。

問題となっていた規定は「契約時から使用日30日前までにキャンセルした場合は、キャンセル料として契約金の30%の支払い義務が発生」という趣旨のもの。

この点について消費者団体側は 「1年前だろうと2年前だろうと、契約をした瞬間から一律30%とは高額すぎる」という趣旨の主張をしていましたが、事業者側がこの主張を「認諾」したということは、この主張に対する有効な反論をできなかったということに他なりません。

「キャンセル料」を巡る争いは、ブライダル業界にとっては古くて新しい問題です。
この問題のキーとなるのは、『消費者契約法』という2000年に成立した法律です。

ブライダルビジネスを展開していく上で大変重要となるこの法律について、以下、できるだけ分かりやすく解説します。

そもそもキャンセル料を設ける根拠は民法第420条第1項と第3項にあります。

民法第420条には、簡単に言うと、
「当事者は契約違反の際の違約金の額を決めておけますよ」
「違約金の額を決めていた場合は、後から裁判所が増減することはできませんよ」
ということが規定されています。

つまり、大原則としては、事業者とお客様との間で
「キャンセル等の契約違反をした場合はいくらの違約金を支払いましょうね」
という合意があれば、法律上それが尊重されるのです。

しかし『消費者契約法』は、事業者と「消費者」 (商品やサービスを消費する人。新郎新婦などのお客様がこれに当たります)との契約については例外を設けることにしていて、第9条第1号で、
「合意した金額が『平均的な損害』を超えた場合は、超えた部分は、いくら合意していても無効ですよ。」
と規定して、「消費者」が不当に高額な解約料を支払わなくてもよいようにして、その保護を図っているのです。

そして、今般の消費者団体はこの条項に基づき、 「契約時から30日前までのキャンセル時のキャンセル料は、一律契約金の30%」とした事業者の規定が、『平均的な損害』を超えたものであると主張していたわけです。

法律的な背景は以上の通りなのですが、『平均的な損害』をどう算定するのかは法律上まったく触れられていないため、その判断を巡る争いがずっ と続いてきたというのが、この問題の実態なのです。

ブライダル業界におけるキャンセル料の問題は、これまでは主に「結婚式場」の契約を巡るものでした。ただ、業界団体が極めて合理的なキャンセル料の算定基準を提言したり、別の消費者団体から
訴訟を提起された大手2社が全面的に勝利するという「実績」を残すなど、業界の方々の大変なご努力により、現時点では、ほぼ「結婚式場のキャンセル料の算定方法」には結論が出たと言えます。

ところが「婚礼衣裳」を巡っては、このような確たる基準や判例がないため、今般の訴訟に限らず今後の焦点になってくることが予想されます。

では、法的な視点から適正と言えるキャンセル料規定を設定するにはどうすればよいのでしょうか。

ポイントは「合理的な算定根拠を示すことができるのか」という点にあると考えます。

上記の「結婚式場のキャンセル料」については、たとえば「本日(2015年10月31日)の挙式」という唯一無二の、永遠に取り返しのつかない営業機会が、お客様のご都合でのキャンセルによって奪われた場合の『機会損失』という考え方に基づいて算定することの合理性を、すでに最高裁が認めています。

しかし、婚礼衣裳のレンタル契約については、別の日に別のお客様へ貸し出すことが可能であるなど「結婚式場の契約」とは異なる事情があり、『機会損失』を算定する方法が「結婚式場」の場合と同じでよいのか、婚礼衣裳は婚礼衣裳で別の算定方法が必要ではないのかという議論がありうるわけです。

この点、BRIGHTでは提携する士業同士で検討を重ねており、今後もセミナー等の機会を通じて提言をしてまいりたいと考えております。

最後になりますが、最初から「キャンセル料で儲けよう」と考えている事業者さんはほとんどいらっしゃらないと私は考えています。
ただ、お客様の一方的なキャンセルによって確実に損害は発生するわけですから、適正な範囲で補償してもらうことは必要です。

社会的にも認められる合理的な根拠に基づいてそれを算定し、お客様にもご納得をいただきながら、きちんと損害を補償してもらえるような「説得力のある規約」を作ることが、今回の事例から事業者が教訓にすべきことだと考えます。

そして、言うまでもないですが、そのためにBRIGHTは全力でお力になりたいと願っています。
(2015.10.31)

国民生活センターが「結婚式契約」について注意喚起をしたそうですが?

2015年11月5日に、国民生活センターが「結婚式」をめぐる トラブルについての相談が増加しているとして、消費者に対して「式場の見学をして気分が盛り上がっても、この式場以外考えられない、という場合以外はその場で申込金を支払わず、契約をする前に、内容をしっかり確認するように」などとする注意喚起を行いました。

このニュースはYahooのトップ記事として取り上げられた他、テレビや新聞等のメディアでも大々的に報じられ、かなり広く周知されました。

注意喚起の具体的な内容は、
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20151105_1.html
から確認することができますが、その中に、
「キャンセル料については(中略)裁判になったケースも複数ありますが、(中略)近年の裁判の流れを見ると、消費者側の主張が認められることが難しい状況となっている」
として、
「キャンセルという事態に至らないよう未然にトラブルを防ぐことが重要です。」
という表現が見受けられました。

これは、昨今消費者団体が大手2社に対してキャンセル料規定の使用差し止めを求めて裁判を起こした結果、いずれも事業者側が勝利をおさめたことを想定しているものと思われます。

つまり国民生活センターは、
『キャンセル料の水準を後から争っても厳しい』
 ↓
『だから契約をする時点でもっと慎重に』
と呼びかけているわけです。

国民生活センターから「名指し」された形のブライダル業界。
今後はますます、
① 先の最高裁の判断を踏まえた「適法・適正な規約」の作成
② 新郎新婦への説明のあり方という「運用面」の見直し
の2点への対応が急務になりそうです。

ブライダルという新郎新婦にとって一生に一度の晴れの舞台が、事業者も、新郎新婦も、双方にとってハッピーで輝くものであるために、今まさに事業者が自らを見直すべき時期だと考えます。
(2015.11.5配信)

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